開催の趣旨Greeting

本年8月に開催された第7回アフリカ開発会議(TICAD7)では、保健衛生や医療環境などのヘルスケアに関する議論が行われました。熊本大学はそれらの議論を踏まえ、アフリカのヘルスケア向上のための提言を発信する取り組みとして、第7回アフリカ開発会議のポストフォーラムを熊本にて開催いたします。

世界保健機関(WHO)が2019 年に発表したアフリカにおける死因の上位には、エイズや下気道感染、下痢性疾患、マラリア、結核が挙げられ、顧みられない熱帯病(NTDs)などを含め感染症は依然アフリカにおける公衆衛生的な大きな課題です。これらの感染症は、単に人々の生命を脅かす保健や医療の問題だけにとどまらず、感染者や死亡者が増えれば、労働力や生産性を低下させ、貧困や生活環境の低下を招くなどの社会問題を引き起こすことから、制圧しなければならない重要な課題です。

さらに、アフリカにおいては、2030年頃までには、生活習慣病を含む非感染性疾患の死亡者数が感染症での死亡者を大きく上回る予測もあり、非感染性疾患に対する対策も重要な課題です。これは、アフリカ経済状況の好転による飢餓からの解放が大きな原因とされることから、課題解決として、医療面からの貢献だけでなく、炭水化物に偏った食慣習やライフスタイルの改善など健康リテラシーの普及と向上などが必要と考えられています。

熊本大学薬学部では、これまで、スーダン共和国やコンゴ民主共和国など、アフリカ諸国への現地訪問やアフリカからの留学生交流を通じて、ヘルスケアの現状やその課題について議論を重ねてまいりました。アフリカでは、西洋医学による先進的な治療を受けられるのは全人口の2割程度であり、約8割の人々は、現在においても伝統伝承の薬用植物を活用した医療を行っています。そこで、熊本大学では、最先端の科学と知識をベースに、アフリカにおいて伝統伝承的に利用してきた薬用植物をさらに有効かつ安全に活用し、アフリカの生活水準や医療体制に見合う保健医療サービスの向上に貢献するために現地の大学と協働しています。私達は、アフリカ諸国の人々、そして日本のアカデミアおよび経済界においてもWin-Winになる、いわゆる「三方良し」の精神で、アフリカの強靭かつ持続可能な社会を推進するための連携体制構築を目指しております。

以上、本TICAD7ポストフォーラムでは、ヘルスケアおよびその関連分野に精通する有識者による、将来のアフリカにおける「日本の強みを活かした快適で健康な生活環境づくり」についての意見交換を行い、その成果を“クマモト提言”として発信し、アフリカにおけるヘルスケアの向上に貢献します。本フォーラムへのご理解とご支援を心よりお願い申し上げます。

第7回アフリカ開発会議ポストフォーラム
in 熊本 実行委員会
委員長 甲斐 広文
熊本大学薬学部 薬学部長

TICAD7官民円卓会議民間からの提言書、アフリカの持続的発展を実現するための重点分野・取り組み より